Nature ハイライト

細胞:iPS細胞を使った疾患モデル

Nature 461, 7262

家族性自律神経失調症は、まれにみられる致死的な末梢神経障害で、転写伸長にかかわるタンパク質をコードする遺伝子IKBKAPの変異によって引き起こされる。Leeたちは、この病気の患者に特異的なiPS(誘導多能性幹)細胞を樹立し、その細胞を末梢ニューロンを含めた、三胚葉系すべての細胞へ分化させたことを報告している。遺伝子発現解析によって、組織特異的なIKBKAPのスプライシング異常がin vitroで明らかになったこと、および患者の神経堤前駆細胞では正常なIKBKAP転写産物の発現レベルが特に低いことから、疾患の特異性が生じる機序が考えられる。トランスクリプトーム解析および細胞を使った解析から、神経発生の際の細胞分化や細胞移動行動の異常が示された。この研究は、ヒト疾患の適切なモデルの作製や、候補薬剤同定のための機能アッセイへのiPS技術の使用に向かう第一歩といえる。

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