ブタ由来の新型インフルエンザH1N1の感染拡大はパンデミック(世界的大流行)の段階にあることが、今や公式に認められている。G Neumann、野田岳志、河岡義裕は、このH1N1ウイルスの出現に関してこれまでに得られた知見を全体にわたって検討し、その抗原性と病理学的特徴を、以前に流行したインフルエンザ株と比較している。そして彼らは、国際社会のパンデミックに対する準備が不十分であると結論付けており、将来の備えを改善していくには、これまで学んできた多くのことに加えて、異種間での伝播、遺伝子再構成、ヒト-ヒト感染についてさらに知る必要があると論じている。表紙は、H1N1ウイルス(A/カリフォルニア/04/09)が感染細胞から出ていく際の走査型電子顕微鏡写真である。細胞表面を覆っているH1N1ウイルス粒子の多くは、球状ではなく糸状である(Review p.931)。Natureオンライン版に先週発表され、次号(p.1122)に掲載される論文では、パンデミックを引き起こす可能性のあるウイルス株を検出する方法の1つとして、ブタのインフルエンザウイルス監視の重要性が強調されている(Editorial p.889, News p.894, www.nature.com/swineflu)。
2009年6月18日号の Nature ハイライト
目次へ戻る