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遺伝:漢文化の拡散

Nature 431, 7006

11億6千万人からなる漢民族は文化と言語が共通しており、世界最大の単一民族集団である。これまで、漢民族は中国北部の古代の華夏族から起こり、その文化は次第に南方へ拡がったと考えられてきた。そうすると、ここで1つの疑問が浮かぶ。漢民族は物理的に自らが南方へ向かい、それに伴って文化を伝えていったのか、それとも移動しない集団間で文化だけがバケツリレーのように手渡されていったのだろうか。この問題は、ヨーロッパでの人々の移住・定着に関して主に論じられてきたものだが、今回L Jinたちは漢民族の遺伝情報を使って、活発な実際の人口移動が漢文化の南方への拡がりを支えた可能性が高いと推論している。 Jinたちは、揚子江で大きく隔てられた北方と南方の漢民族間で知られている遺伝的差異に着目した。男性のみがもつY染色体の塩基配列については揚子江の両側で分布状況にほとんど差がみられなかったが、母系遺伝するミトコンドリアDNAについて調べたところ著しい差異が認められたことをJinたちは明らかにしている。この結果からすると、長期間に及ぶ漢族の南方移動では、簡単にいうと男性が主役であったと考えられる。

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