Nature ハイライト

疫学:数を頼りに広がるペスト

Nature 454, 7204

パーコレーション(浸透)理論は多孔性の媒質中をゆっくり流れる液体を扱う統計物理学の分野だが、一般的にもっと広げて、ランダムな系における長距離の連結形成を考察するのにも使うことができる。この理論は特定の条件下での感染症の拡大にも応用できる可能性が示唆されていたが、これまで自然界での実例は報告されていなかった。このような拡大のしかたをすることがわかったのは、中央アジアに生息するオオスナネズミ集団での疫病(ペスト菌感染)である。ノミがペスト菌をオオスナネズミの1つの家族集団から別の家族集団へと運ぶ拡散移動は、砂漠地帯の広大な生息域に比べれば小規模である。これは、ある地域における宿主オオスナネズミの家族集団の個体数密度が十分に高くなった時にだけ、そこにペストが浸透していく系とみなされる。

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