Nature ハイライト

化学:水素原子を強く引っ張る

Nature 454, 7200

単純でよく研究されている振動非弾性衝突の例は、重水素分子への水素原子の衝突である。従来は、その過程でD-D結合が一時的に圧縮されて振動励起が起こり、衝突相手は後方に散乱されると考えられてきた。しかし意外なことに、これとは異なる非弾性散乱機構が今回、実験によって明らかになった。Greavesたちは、水素原子と重水素分子がかすり合う程度に衝突しただけの場合にも振動励起が起こることを観察し、これは、通過する水素原子との相互作用を通したD-D結合の伸長によるものと考えた。衝突相手との間に引力が発生する場合には常に、この綱引き(tug-of-war)機構が働くはずだ。

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