Nature ハイライト

Cover Story:一定の力で結ぶ:「引き解け結び」が、外科手術の創傷を一定の力で閉じる簡便な方法をもたらす

Nature 647, 8091

外科手術における縫合・結紮では、力の正確な制御が求められる。閉じる力が弱過ぎると縫合創が開いて漏出が生じ、強過ぎると創傷部が膨れ上がって血流が妨げられてしまうからだ。ロボットはこの作業を支援できるが、ロボットの複雑なセンシングシステムは、低侵襲手術のように作業空間が限られた場面ではその性能を発揮しにくい。今週号でT Liたちは、単純な「引き解け結び」の力学を解析し、この結び目を使えば、電子機器に頼らなくても、力の機械的な伝達によって創を一定の力で閉じられることを明らかにしている。著者たちは、トポロジカルに設計された引き解け結びが、95.4%という高い一貫性で力を伝達できることを見いだした。彼らはこの原理を使って、通常の外科結紮に加えて同じ縫合糸に引き解け結びを追加する「sliputure(引き解け縫合)」と呼ぶやり方を設計した。外科医は創傷の上で通常通り外科結紮を作り、その後、引き解け結びがほどけるまで引き締める。そうすることで、外科結紮に適切な圧力がかかるような機械的な力が伝達される。今回の報告では、引き解け縫合方式によって、経験の浅い外科医の結紮の精度が121%向上し、術後の血流と組織治癒も改善されることが示された。

2025年11月27日号の Nature ハイライト

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