Nature ハイライト
Cover Story:食糧の予測:気候変動とその適応策は世界の農業にどのような影響を及ぼすか
Nature 642, 8068
表紙は、エジプトの西方砂漠にある円形の灌漑地の衛星画像である。こうした土地改良は、気候変動が農業や土地利用に与える影響を緩和するために採用できる、多くの戦略の1つである。だが、温暖化する気候において適応が食糧システムにどう影響するかはよく分かっておらず、既存のモデルは地域ごとに焦点を絞ったものであるため、矛盾する結果が得られている。今週号ではA Hultgrenたちが、世界の6種類の主要作物に関するデータを統合した新たなモデルを紹介している。研究チームは、トウモロコシ、ダイズ、イネ、コムギ、キャッサバ、モロコシに的を絞り、55カ国の1万2658の地域からのデータに基づいて、生産者の適応が今後100年の食糧生産に及ぼす影響を推定した。その結果、気温が1 ℃上昇するごとに、現在の食糧生産量は1人1日当たり120 kcalの減産が見込まれる一方、所得の増加や適応戦略によって、2050年までに世界の損失の23%、2100年までには世界の損失の34%が回避できると見積もられた。
2025年6月19日号の Nature ハイライト
天文学:長周期電波トランジェントのX線放射を検出
量子光学:量子コンピューティングに向けたフォトニックチップ
フォトニクス:ハロゲン化鉛ペロブスカイトを積層させた高感度イメージセンサー
有機エレクトロニクス:有機エレクトロニクス向けの高分解能ドーピング
高分子化学:炭素繊維強化エポキシ樹脂の分解・回収方法
有機金属化学:NMRを用いた単一原子触媒の局所構造決定
気候科学:温暖化で加速する干ばつの深刻化
気候科学:2023年の極端な北大西洋海洋熱波
生態学:北極域の植物多様性に対する温暖化の影響
遺伝学:初期の妊娠喪失を胎児と両親のゲノムで探る
神経科学:神経精神疾患の治療は原因遺伝子の同定だけでは解決しない
植物科学:植物の根が土壌ストレスに適応する仕組み
再生生物学:肢再生の位置情報を記憶する分子機構
ウイルス学:異種間伝播を引き起こし得る新規コロナウイルス
免疫学:免疫疾患やアレルギーの治療に役立つ新たな手掛かり
細胞生物学:損傷のあるDNAの複製を追跡して細胞の多様性の原因を探る
分子生物学:ほぼ全ての酵母転写因子のDNA結合と転写調節の包括的解析
分子生物学:タンパク質の決まった構造を持たない領域がmRNA分解装置と協働している
構造生物学:メチル補酵素M還元酵素(MCR)活性化複合体の構造