Nature ハイライト

Cover Story:絵に描いたような修復:コンピューター生成マスクを使って油彩画を修復する

Nature 642, 8067

油彩画の修復に使われたラミネートマスクの層を可視化した図。
油彩画の修復に使われたラミネートマスクの層を可視化した図。 | 拡大する

Alex Kashkin

世界中の美術館や画廊には膨大な数の絵画が所蔵されているが、その多くは劣化や損傷のために保管庫に眠ったままである。絵画修復は手間も費用もかかるプロセスであり、それだけ難易度が高いのは、数千もの複雑な傷や汚れが存在することが多いためである。これまで修復作業の指針にはデジタルスキャンやデジタル復元が用いられてきたものの、コンピューター上で修復した画像を実際の作品に適用する簡便な方法は存在しなかった。今週号ではA Kachkineが、コンピューターで生成した復元画像を可逆性のある物理的修復へと変換して、修復に要する時間とコストを大幅に削減する手法を提示している。この手法では、まず作品をデジタル化して損傷箇所を特定する。次に、生成モデルを用いて修復後の見え方を予測し、必要な変更をラミネートマスクに印刷する。そして、完全に着脱可能なマスクを元の絵画に貼り付けることで、絵画は元の輝きを取り戻す。表紙は、プラド美術館所蔵の『東方三博士の礼拝』を描いた匿名の名手作とされる15世紀の油彩画を、損傷した作品のスキャン画像と修復完了後の作品の画像の比較で示している。

2025年6月12日号の Nature ハイライト

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