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微生物学:細菌相による薬剤の生物蓄積

Nature 597, 7877

最近の研究で、腸の微生物相が、薬剤修飾活性を介して治療薬の利用可能性や有効性を変化させる場合があることが示されている。K Patilたちは今回、さまざまなクラスの15種類の薬剤を評価し、細菌細胞内での薬剤の蓄積が、腸内細菌が実行している、これまで正当に評価されていなかった新たな機構であることを示している。重要なことに、細菌細胞内での薬剤の蓄積は、化学的変換とは異なり、いかなる化学修飾も伴わない。抗うつ薬デュロキセチンをテストケースとして用いたところ、この薬剤が腸で代謝の活性やクロスフィーディングを再構築し、これによって腸のマイクロバイオームの組成や種間相互作用が変化することが分かった。in vivo実験でも、生物蓄積を起こしている細菌が、線虫の一種Caenorhabditis elegansのデュロキセチンに対する行動応答を減弱させることが実証された。これらのデータは、腸内細菌による生物蓄積が、薬剤の利用可能性や細菌の代謝を変化させる一般的な機構である可能性を示唆している。

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