腫瘍免疫学:腫瘍の所属リンパ節中のPLA2G2Dは抗腫瘍免疫を調節する
Nature 658, 8135 doi: 10.1038/s41586-026-10954-1
全身性の抗腫瘍免疫は、腫瘍所属リンパ節(TDLN)でのT細胞のプライミングから生じる。腫瘍組織中で起こるT細胞抑制についてはよく調べられているが、これがTDLNでも起こるのかどうか、起こるとすれば、どのような分子機序によるものなのかは、ほとんど分かっていない。本研究で我々は、悪性黒色腫患者由来のTDLNをイメージングマスサイトメトリーで解析することにより、遠隔転移巣の発生と関連しているTDLN傍皮質内の空間的近傍領域を特定した。この近傍領域内に存在する細胞を標的とした空間トランスクリプトーム解析により、活性化されたCD8+ T細胞が、免疫抑制性の分泌型ホスホリパーゼPLA2G2Dを高発現する骨髄系細胞と相互作用していることが明らかになった。PLA2G2D+骨髄系細胞は、原発巣や転移巣よりも、TDLN中にかなり多く存在していた。PLA2G2Dの遺伝学的機能喪失あるいは抗体による抑制は、腫瘍増殖を著しく低下させ、また、悪性黒色腫を有するマウスの単一細胞トランスクリプトーム解析では、Pla2g2dの発現はリンパ節マクロファージに限定されていることが明らかになった。分子機序的には、PLA2G2Dはin vitroでT細胞の初期増殖を直接抑制し、PLA2G2Dを阻害するとTDLNで腫瘍特異的T細胞が増加し、その結果、これらのT細胞が循環血中で増加した後、腫瘍内でも増加した。注目すべき点として、PLA2G2DとPD-1は機能的に非冗長な免疫チェックポイントであり、ヒト特異的抗体を投与したヒト化マウスにおいて、これらを組み合わせた治療は相加的または相乗的な効果を発揮した。以上を総合すると、我々の詳細な空間プロファイリングにより、PLA2G2Dが、TDLNを中心に機能し、がん免疫療法の標的となり得る免疫チェックポイントであることが明らかになった。

