分子生物学:自動化による遺伝暗号の試作
Nature 658, 8135 doi: 10.1038/s41586-026-10949-y
生物の全ドメインに共通する標準的な遺伝暗号は、64個のコドンを使って20種類のカノニカルなアミノ酸をコードしている。自然界にはない新しい遺伝暗号は、新しい化学、治療法、生態系操作を可能にするが、ある生物のゲノムを再コード化することは非常に難しい。今回我々は、無細胞翻訳系で遺伝暗号をロボットにより多重並列で試作するための、AGENTEX(automated genetic tRNA expansion)について報告する。リボソームの大サブユニット(LSU)内の2個のワトソン–クリック相互作用は、tRNAの3′末端のCCAの識別を仲介し、異なる3′末端配列を持つtRNAが翻訳中に取り込まれるのを防ぐ。これらの相互作用を足掛かりとして、3′末端がCCAではないtRNA(otRNA)が、天然のアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)によってどの程度アミノアシル化されるかを調べた。これにより、LSUを改変したリボソームを使い、otRNAプールに固有の遺伝暗号を規定することが可能になった。我々は、合成tRNAライブラリー内のアミノアシル化を読み出す、多重並列かつ自動化した手法を開発した。その結果、tRNAの3′末端には変異を許容する顕著な柔軟性があり、大腸菌(Escherichia coli)の全てのaaRSを用いて、大半のotRNAをアミノアシル化できることが見いだされた。我々は、これらの発見に基づいて、34個のコドンに対して34種類のaaRSを用いる圧縮遺伝暗号を可能にする無細胞翻訳系を開発した。そして、AGENTEXを使い、非標準アミノ酸の取り込みと最大3個のコドンの再割り当てを含め、2種類の遺伝暗号を標準的な遺伝暗号と併せて評価した。これらの知見は、根本的に新しい翻訳系の設計、非標準モノマーを複数箇所に含む生体高分子の合成、そして過去に存在し得た、あるいは将来存在し得る遺伝暗号の理解に示唆を与えるものである。

