構造生物学:エムポックスウイルスのレプリソームの構造と作動原理
Nature 658, 8135 doi: 10.1038/s41586-026-10937-2
ポックスウイルスは、大型のゲノムを持つ二本鎖DNAウイルスである。この群に属するエムポックスウイルス(MPXV)は、世界保健機関(WHO)が最近宣言した2度の「公衆衛生上の緊急事態」の原因となっている。MPXVのポリメラーゼは、触媒サブユニットF8と、ヘテロ二量体であるプロセシティビティー因子を構成するA22とE4という、3つのサブユニットで構成される。このウイルスポリメラーゼがウイルスゲノムの複製を開始するには、六量体ヘリカーゼ–プライマーゼE5と活性を協調させる必要がある。MPXVのE5とポリメラーゼのそれぞれの単独の構造は得られているが、両者がどのように集合して機能を持ったレプリソームを形成するかはまだ明らかになっていない。単独のE5は自己阻害型のコンホメーションをとり、ヘリカーゼ活性は非常に低く、その活性化機構も明らかになっていない。今回我々は、クライオ電子顕微鏡を用い、ポリメラーゼホロ酵素(F8、A22、E4)とE5ヘリカーゼ六量体からなる、DNAに結合した状態のMPXVレプリソームの構造を決定した。我々は、レプリソームの形成の際にE5は大規模なコンホメーション変化を起こし、そのプライマーゼドメインのうち2つが、ポリメラーゼF8のサムドメインおよびA22サブユニットと相互作用できるようになることを示す。生化学アッセイと単一分子実験により、このE5のコンホメーション変化がヘリカーゼの活性化と共役し、プライマーゼ活性も増強することが明らかになった。まとめるとこれらの知見は、重要なウイルス病原体群において、DNA複製の際のヘリカーゼとポリメラーゼの協調的な活性を支配する基本機構を明らかにしている。

