Article

神経科学:生涯にわたるヒト前頭前皮質の単一細胞トランスクリプトームアトラス

Nature 657, 8133 doi: 10.1038/s41586-026-10271-7

ヒトの脳は発生・発達の初期から成人期後期まで著しい変化を経験し、それによって認知、行動、疾患に対する脆弱性が形作られる。このような変化が、特定の脳領域や細胞タイプ内でどのように組織化されているのかを理解することは、正常な老化と、精神疾患および神経変性疾患と老化との関係を解明する上で不可欠である。背外側前頭前皮質は高次認知機能において中心的な役割を担っており、加齢に伴う機能低下に特に感受性が高いが、ヒトの生涯にわたるその細胞プログラムおよび分子プログラムについては、依然として十分に明らかにされていない。既存の研究の大半は、限られた年齢範囲や疾患の影響を受けた脳に焦点を合わせたものであり、正常な発達・老化の軌跡と病理学的過程を区別する能力が制約されてきた。その結果、ヒト前頭前皮質の細胞状態について、生涯の各段階を区別した包括的な参照データが欠けていた。本研究で我々は、ヒトの生涯を網羅する単一核トランスクリプトームアトラスを用い、背外側前頭前皮質が非線形かつ細胞タイプ特異的な転写軌跡を示すことを明らかにする。この軌跡は、発達期の動的なリモデリング、中年期の相対的な安定性、成人期後期の選択的な分子再活性化により特徴付けられる。我々は、生涯初期のニューロンのレジリアンスに関わる経路や、免疫活性化、ストレス応答、概日リズムの再編成に関連する高齢期のグリアプログラムなど、ニューロンとグリアで異なるプログラムを特定した。これらのプログラムは、皮質の各層と灰白質・白質の領域にわたって解剖学的に組織化されており、これにより、協調した空間的・分子的変化が明らかになった。まとめるとこれらの知見は、ヒト脳皮質において細胞プログラムがレジリアンスから脆弱性へと移行する仕組みを理解する枠組みを提供するとともに、加齢に伴う認知機能低下と疾患リスクを解釈するための基盤を確立する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度