素粒子物理学:ミューオンのg – 2におけるハドロン真空偏極の0.48%に達するハイブリッド計算
Nature 653, 8114 doi: 10.1038/s41586-026-10449-z
50年にわたり、素粒子物理学の標準模型は、原子より微小な現象の記述に大きな成功を収めてきた。しかしこの標準模型については、過去四半世紀の間に、その予測値とミューオンの異常磁気モーメントaμの精密測定値との間の不一致によって疑問が投げ掛けられていた。この不一致は、まず、不確かさの最も大きい理論的寄与である最低次のハドロン真空偏極(LO-HVP)、aμLO-HVPがab initio格子計算によって決定され、続いて、実験の結果とaμLO-HVPの格子計算結果を用いた標準模型の基準予測値が更新されたことで、最終的に解消された。今回我々は、この極めて重要な量について新たな計算を行い、aμLO-HVP = 715.1(2.5)(2.3)[3.4] × 10−10という値を得た。これにより、我々の以前の計算と比較して、不確かさが1.6分の1に低減した。我々は、全ての実験結果が一致する低エネルギー領域において実験から得られる小さい長距離寄与を取り込んだ、ハイブリッド手法を採用した。今回の手法は、異なるエネルギー範囲における実験データと格子データの強みを組み合わせるものであり、どちらかを単独で用いる場合より高い精度を達成した。我々の格子量子色力学(QCD)シミュレーションは、参考文献1よりも細かい格子上で実行されており、そのため、より正確な連続極限への外挿が可能である。参考文献3でまとめられている標準模型における他の寄与に関する計算と組み合わせると、今回の結果からは、aμの最近の測定値とわずか0.5標準偏差しか違わない予測値がもたらされる。これは、標準模型を11桁の精度で顕著に検証するものである。

