生物工学:無細胞系でのクロマチン状態の追跡によって、疾患の起源と治療反応性が明らかになる
Nature 653, 8114 doi: 10.1038/s41586-026-10224-0
血液中の無細胞DNAは、健康な組織と疾患の組織の両方に由来する死にゆく細胞によって放出される、断片化したクロマチンに由来する。これらの断片には、起源である組織中の病理学的な変化を明らかにすることができる豊富な分子モダリティーが含まれる。今回我々は、50 μlというごく少量のヒト血漿由来の無細胞DNAに見られるヒストン修飾をプロファイリングする、極めて高感度の自動化プラットフォームであるcf-EpiTracingを開発した。cf-EpiTracingでは、マルチモーダルなクロマチン状態と機械学習とを組み合わせることにより、起源の細胞タイプを正確にデコンボリューションすることができる。我々は、健康な125人と、炎症性腸疾患、大腸がん、もしくは冠動脈心疾患の患者549人の血漿を調べて、2417のcf-EpiTracingプロファイルを作製した。cf-EpiTracingによって、疾患の原発巣組織および他の器官の関与が偏りなく明らかにされ、異なった遺伝的要因やエピジェネティックな要因を持つB細胞リンパ腫のサブタイプの層別化と、初期段階の疾患や病変の検出が可能となった。エピジェネティックシグネチャーの動的変化を調べたところ、濾胞性リンパ腫からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫への形質転換が明らかになった。またcf-EpiTracingによって、マントル細胞リンパ腫患者のゲノムの転座とエピジェネティックな変化が明らかになった。注目すべきは、今回の研究では遺伝子の転写に関する情報とは別個に、全体的なエピジェネティックシグネチャーを活用して、再発リスクと治療反応性を正確に明らかにしていることである。これらの知見を総合すると、cf-EpiTracingは、自動化され、非侵襲的で、エピゲノムを中心とする枠組みであり、早期診断、分子サブタイプの分類、予後予測に幅広く利用できることが明確になった。

