細胞生物学:カスパーゼ5cはAPCの切断を介してWntを増強し、腸管恒常性を促進する
Nature 652, 8112 doi: 10.1038/s41586-026-10343-8
カスパーゼ5(CASP5)は炎症性カスパーゼファミリーのシステインプロテアーゼであり、炎症や細胞死に関与している。CASP5は炎症性CASP4と相同性が最も高いが、CASP4は非カノニカルなインフラマソーム活性化に不可欠であるのに対し、CASP5は必須ではなく、その機能については不明である。本研究で我々は、CASP5はヒトの腸上皮に限局しており、CASP5A、CASP5B、CASP5Cという3つのアイソフォームとして発現していること、その中でもCASP5Cが、上皮の発生と再生に不可欠なWntシグナル伝達を促進することを示す。我々は、大腸上皮細胞において、Wnt受容体とβカテニン分解複合体を橋渡しするdishevelledが、主要なCASP5結合パートナーであることを突き止めた。Dishevelledは、そのDEP(dishevelled, EGL-10 and pleckstrin)ドメインを介してCASP5の触媒ドメインと相互作用する。CASP5AとCASP5Bが持つ抑制性CARD(caspase activation and recruitment domain)を欠くCASP5Cは、中心的な足場タンパク質であるAPCをアルマジロリピートドメイン中のAsp556で切断し、βカテニン分解複合体を不安定化することで、Wntシグナル伝達を亢進する。CASP5Cは、腸幹細胞のWnt依存性子孫であるTA(transit-amplifying)細胞で最も強く発現するのに対し、CASP5AとCASP5Bは主として成熟した腸細胞で発現する。内因性および異所性のCASP5Cは、TA細胞の増殖を必要とすることが知られている大腸オルガノイドと小腸オルガノイドの増殖を促進する。さらに、CASP5Cは腸上皮が損傷すると選択的に誘導され、炎症性腸疾患においてその発現が上昇している。従って、CASP5Cは、Wnt勾配が低下する中でAPCを切断してTA細胞の増殖を維持するWntシグナル伝達の酵素的増幅因子であり、上皮の更新を保護している。これらの知見は、炎症性カスパーゼの役割を自然免疫の範囲を超えて広げ、組織恒常性にも関与することを明らかにしている。

