発生生物学:発生中のヒト生殖管の時空間的な細胞地図
Nature 650, 8101 doi: 10.1038/s41586-025-09875-2
ヒトの生殖管は種の存続と健康全般に不可欠である。その発生には、性の指定、組織のパターン形成、形態形成の複雑な過程が関わっており、これらが破綻すると不妊などの生涯にわたる問題が生じ得る。今回我々は、より小規模な器官に焦点を絞った研究では得ることのできない知見を提供するため、出生前の発生の際のヒト生殖管の広範な単一細胞空間マルチオミクスアトラスを提示する。我々は、生殖器官における性的二型性の潜在的な調節因子について記述し、ミュラー管の出現と退縮、陰茎の尿道形成に関与するこれまで知られていなかった遺伝子群を示す。我々は、組織学的特徴を、遺伝子発現およびクロマチンアクセシビリティーデータと組み合わせることで、ミュラー管とウォルフ管の領域化に関与する可能性のある転写因子やシグナル伝達事象を明らかにした。我々はまた、異なる生殖器官においてHOXコードが確立される仕組みをさらに詳細に示し、ファローピウス管および精巣上体の吻側間葉において胸部HOX遺伝子群の発現が上昇していることを明らかにする。我々の知見はさらに、精子の成熟と受精能獲得に関与していると考えられるファローピウス管と精巣上体の上皮領域化は、発生過程で確立されることを示している。対照的に、子宮頸管上皮の領域化には、これより後の事象が不可欠である。さらに我々は、単一細胞データと胎児由来オルガノイドに基づき、胎児の子宮上皮はエストロゲンを模倣する内分泌撹乱物質に脆弱であることを示す。我々の研究は、性特異的な生殖管の領域化と分化を細胞レベルでマッピングすることにより、発生時に生じる生殖障害の原因と有望な治療法についての貴重な手掛かりを示している。

