天文学:赤方偏移5.7にあるX線放射原始銀河団が示す急速な構造成長
Nature 649, 8099 doi: 10.1038/s41586-025-09973-1
銀河団は、宇宙において最も大きな質量を持つ重力的に束縛された構造であり、大規模構造がどのように組み立てられていくかを追跡する指標となる。また、これらの前駆体である原始銀河団の研究によって、銀河団形成の最初期段階を解明することができる。しかし、原始銀河団を構成する銀河はゆるく結び付いているだけで、形成されつつある高温の銀河団内媒質(ICM)もまだビリアル平衡の初期段階にあるため、それらの検出は容易ではない。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による最近の観測によって、z ≳ 5にある銀河の過密領域が特定され、複数の原始銀河団の候補が発見された。しかし、これらの候補はいずれも、高温ICMの存在を明らかにするための強力な手法であるX線観測では検出されていない。今回我々は、チャンドラX線観測衛星とJWSTの併用により、ビッグバンからわずか10億年後となるz ≈ 5.68に原始銀河団JADES-ID1を検出したことを報告する。我々は、全放射X線光度をLbol = (1.5+0.5−0.6) × 1044erg s−1と測定し、総重力質量をM500 = (1.8+0.6−0.7) × 1013M☉と推定した。これは、この系が現在の最も質量の大きい銀河団の前駆体であることを意味している。広範に広がり衝撃加熱されたガスの検出は、z ≈ 5.7という初期の時代において、大質量ハロー内で既にかなりのICM加熱が発生し得たことを示している。また、サーベイ体積が限られていることを考えると、こうした大質量の銀河団が発見されることは統計的に起こりにくく、初期宇宙のいくつかの領域では、標準宇宙論モデルの予測よりも急速に大規模構造の形成が進んでいたはずであることを示唆している。

