遺伝学:Cas9はCRISPR RNAの量を感知してCRISPRのスペーサー獲得を調節する
Nature 647, 8091 doi: 10.1038/s41586-025-09577-9
原核生物はスペーサーと呼ばれる外来DNA断片を獲得してCRISPR配列中に組み込むことにより、適応免疫記憶を作り出す。II型CRISPR–Cas系では、RNAをガイドにしたエフェクターCas9も、プロトスペーサー隣接モチーフに挟まれたDNAからスペーサーを選択することによって獲得機構を助けている。本論文で我々は、対応する2個一組のRNAパートナーに依存しないCas9の生物学的役割を初めて明らかにする。ナイセリア属(Neisseria)細菌のapoCas9は、CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化型RNAの一方、あるいは両方が枯渇すると、スペーサーの獲得効率を高める。生理学的には、Cas9はCRISPR配列を新生している場合や自然に配列が縮小した場合のように、短いCRISPR配列を持つ細胞でcrRNAの濃度低下を感知し、スペーサー獲得を大幅に亢進させて、免疫記憶の少ない蓄積を速やかに増加させる。CRISPR配列が拡大するにつれて、crRNA量が次いで増加してapoCas9の利用可能性を低下させるので、このため獲得の速度が低下して、獲得亢進に伴って自己免疫のリスクが軽減する。apoCas9のヌクレアーゼ部分だけでもスペーサー獲得を促進するには十分だが、crRNAの濃度に応答して、免疫のレパートリーが乏しい状態にある細胞でのスペーサー獲得を促進するのは、完全長のCas9だけであった。さらに、この活性はいくつかのII-C型Cas9オルソログに共通していて、進化上良く保存されていることが分かった。これらの知見を総合することにより、apoCas9がcrRNAセンサーとスペーサー獲得の調節因子の両方の働きをすることによってCRISPR免疫のレパートリーを守るという、自己補給型のフィードバック機構の存在が明確になった。

