微生物学:ヒト腸由来の溶原性ファージの単離、改変および生態
Nature 647, 8090 doi: 10.1038/s41586-025-09614-7
大規模なメタゲノム解析とデータマイニングの取り組みにより、ヒトの腸内のバクテリオファージ(ファージ)の広範な多様性が明らかになっている。しかし、この複雑な環境内におけるファージと宿主の相互作用の機能的理解は、主に実験的検証に利用可能な培養分離株がないために限定的である。今回我々は、10種類の誘導条件を用いて、ヒトの腸から得た252の細菌分離株に由来する134の誘導可能なプロファージの特徴を明らかにし、ヒト腸由来の実験的に検証済みの溶原性ファージ–宿主の対を拡大した。重要なことに、純粋培養で誘導できたのは、計算的に予測されたプロファージのうち18%のみだった。また、78細菌からなる合成マイクロバイオームを構築し、これをヒト大腸細胞(Caco2)の存在下で共培養したところ、35%のファージ種の誘導につながった。培養分離株を用いることで、ヒト宿主関連の細胞産物が誘導因子として作用する可能性が実証され、消化管細胞の溶解と溶原性ファージ集団が関連している可能性が示された。プロファージの多様性と遺伝学的性質(ドメスティケーションのための遺伝的経路を含む)についての重要な洞察が得られ、多重溶原性が一般的であり、協調的なプロファージ誘導が引き起こされること、そして、誘導の差異はプロファージの組み込み部位の違いによって影響を受け得ることが見いだされた。さらに広く見れば、我々の研究は、ヒトの腸内マイクロバイオームにおける溶原性ファージの生物学的性質や機能を理解するためには、実験的検証、ゲノミクス、計算的予測と共に、培養に基づく技術が重要であることを浮き彫りにしている。こうした培養に基づく手法は、合成生物学、生物工学、マイクロバイオームの各分野にまたがる応用を可能にするだろう。

