微生物学:片利共生酵母はネズミチフス菌の毒力を増強する
Nature 645, 8082 doi: 10.1038/s41586-025-09415-y
腸内病原体は、宿主や常在微生物相と複雑に相互作用して、腸での定着を成立させる。腸内病原体と片利共生細菌の間の機構的相互作用については広く研究されてきたが、片利共生菌類が腸感染に影響を及ぼすかどうか、影響を及ぼすとすればどのようになのかについては、ほとんど分かっていない。本論文で我々は、一般的なヒト腸内片利共生菌類であるカンジダ属菌類Candida albicansの定着が、腸内病原体であるネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium)感染を悪化させたことを示す。マウスの腸内にC. albicansが存在することで、ネズミチフス菌の盲腸への定着と全身性播種が増加した。我々はその基盤となる機構を調べ、ネズミチフス菌は1型線毛を介してC. albicansに結合し、その3型分泌装置を使ってエフェクタータンパク質をC. albicansへ送達することを見いだした。特異的なエフェクターであるSopBは、C. albicansの代謝を改変して、ミリモル濃度のアルギニンの細胞外環境への放出を誘導するのに十分であった。放出されたアルギニンは次に、ネズミチフス菌で3型分泌装置の発現を誘導し、上皮細胞への侵入を増加させた。アルギニン産生を欠くC. albicansは、ネズミチフス菌の毒力を高めることができなかった。またアルギニン産生C. albicansは、ネズミチフス菌感染時の炎症反応を弱めた。C. albicans非存在下でアルギニンを補給すると、ネズミチフス菌の全身性播種が増加し、炎症反応が低下し、C. albicans存在状態の表現型を模写した。このように我々は、C. albicansの定着がネズミチフス菌の播種性感染の感受性因子であること、およびアルギニンが菌類、細菌、宿主間の界横断的な相互作用における中心的な代謝物であることを明らかにした。

