分子生物学:単一細胞の新生RNAの塩基配列解読によって明らかになった協調した転写の全体像
Nature 631, 8019 doi: 10.1038/s41586-024-07517-7
転写は遺伝子発現の最も重要な調節段階である。複数のプロモーターやエンハンサーからの多様な転写開始によって、遺伝子からは安定したRNAが、エンハンサーからは不安定なRNAが作られる。新生RNAの捕捉と塩基配列解読アッセイでは、細胞集団における遺伝子とエンハンサーの活性を同時に測定する。しかし、転写の時間的調節とエンハンサーと遺伝子の協調に関する基本的な疑問はいまだに解明されておらず、その主な原因は活発な転写の全体像を単一細胞で捉えた研究がないことである。今回我々は、クリックケミストリーを用いて単一細胞の新生RNAの塩基配列を解読する新しいアッセイ法(scGRO–seq)を開発し、ゲノム全体で協調しながら転写が起こっていることを明らかにした。そして、転写は間欠的に起こる性質があること、機能的に関連する遺伝子は同時に転写されることを実証した。scGRO–seqでは、個々の細胞で転写中のRNAポリメラーゼを直接的に定量することによって、間欠的に起こる転写のサイズや頻度を推定でき、また、複製に依存して起こるポリアデニル化されていないヒストン遺伝子の転写を利用して、細胞周期の動態を解明することもできる。scGRO–seq法の空間的・時間的分解能は単一ヌクレオチドレベルであり、これによってエンハンサーと遺伝子のネットワークを明らかにすることができた。これらの結果は、超エンハンサーでの転写の急激な増加が起こってから、関連する遺伝子の転写が続いて急増することを示唆している。転写全体の動的性質および転写シグナルの起源と伝達についての知見が得られたことによって、このscGRO–seq法が転写の調節機構やエンハンサーが遺伝子発現に果たす役割を調べる能力を備えていることが実証された。

