古生物学:エディアカラ紀後期のクラウン群海綿動物
Nature 630, 8018 doi: 10.1038/s41586-024-07520-y
海綿動物は最も原始的な後生動物門であり、新原生代の海洋の酸化還元構造を調節する上で重要な役割を果たした可能性がある。分子時計からは、海綿動物が新原生代に分岐したことが予測されているが、カンブリア紀以前の海綿動物化石は明確に実証されてはおらず、これは先カンブリア時代の海綿動物が骨片を持たず、生体鉱物化作用(バイオミネラリゼーション)が見られなかったためである可能性がある。本論文で我々は、中国南部の灯影累層(Dengying Formation、約5億5100万~5億3900万年前)から出土した、エディアカラ(エディアカラン)紀後期の新属新種Helicolocellus cantoriの化石を報告する。この化石は、茎(柄)と杯形の体部を有する高さ0.4 m以上の大型底生生物として復元され、体壁は、カントールダスト(カントール集合)のフラクタルパターンに似た、長方形の領域の連なりを特徴とする3階層以上の入れ子状グリッドで構成されている。このグリッドから生じた格子は、直交して並んだ十字形の要素をなす有機物骨格と解釈され、これは一部の六放海綿類に似た構造だが、六放海綿類の体はバイオミネラリゼーションで生じた骨片で構成されている。ベイズ法による系統解析の結果、H. cantoriは六放海綿綱に近縁のクラウン群海綿動物として位置付けられた。H. cantoriは、海綿動物が、有機物骨格を有するがバイオミネラリゼーションは行わない動物として、先カンブリア時代に分岐し、存在していたことを裏付けている。海綿動物の各綱でシリカバイオミネラリゼーションが別々に進化した可能性を踏まえると、バイオミネラリゼーションで生じた骨片を先カンブリア時代の海綿動物化石の特定に必要な基準とすることの妥当性は疑問である。

