Article
分子生物学:転写と複製の競合がPARP阻害剤に対する感受性を引き起こす
Nature 628, 8007 doi: 10.1038/s41586-024-07217-2
相同組換え(HR)の欠失したがんを治療するためのポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤の開発は、がん治療における重要な進展の1つである。PARP阻害剤はPARPをDNA上で捕捉し、捕捉されたPARPはレプリソームの進行を妨げて、それがDNA二本鎖切断(修復にはHRを必要とする)の形成につながると考えられている。今回我々は、PARP1がTIMELESSおよびTIPINと共に働いて、S期初期のレプリソームを転写と複製の競合(transcription–replication conflict)から守ることを明らかにする。また、PARP阻害剤とHR欠失がもたらす合成致死性は、転写と複製の競合によって生じたDNA損傷が修復できないことが原因であって、PARPの捕捉によるものではない。これらの知見と一致して、S期初期に転写の伸長を妨げるとHR欠失細胞がPARP阻害剤に対する耐性を獲得し、また低分子干渉RNAによるPARP1の枯渇はHR欠失との合成致死を引き起こす。従って、HRが欠失した状況ではPARP1の酵素活性の阻害だけで十分な治療効果が得られる可能性がある。

