天文学:重力レンズ効果を受けた初期宇宙の活動銀河核における母銀河に対するブラックホールの高い質量比
Nature 628, 8006 doi: 10.1038/s41586-024-07184-8
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による初期の観測から、これまで見過ごされていた超大質量ブラックホールの成長段階を示す可能性のある、赤い天体の種族が明らかになっている。最も興味深い例の1つが、銀河団Abell2744による強い重力レンズ効果によって三重像になっていることが明らかになった、極端に赤い点状の天体である。本論文で我々は、この天体Abell2744-QSO1の、JWSTの近赤外線分光器(NIRSpec)による高感度分光観測の結果について報告する。得られたスペクトルは、3つの像が同一の天体のものであり、また、この天体がzspec = 7.0451 ± 0.0005という赤方偏移を持つ、強く赤化した(AV ≃ 3)広輝線の活動銀河核であることを裏付けている。我々は、Hβ線の幅(半値全幅 = 2800 ± 250 km s−1)から、ブラックホールの質量がMBH = 4+2−1 × 107M☉であることを見いだした。また、母銀河の質量に対するブラックホールの質量比が少なくとも3%と非常に高く、近傍銀河に見られる値よりも1桁大きくて、100%に達する可能性もあると推測する。スペクトルに金属からの輝線が強く検出されていないことと、全放射光度が高い(Lbol = (1.1 ± 0.3) × 1045 erg s−1)ことから、エディントン限界の30%で降着を受けている急速な成長段階にあるブラックホールが見えていることが示された。Abell2744-QSO1の急速な成長と、母銀河に対するブラックホールの高い質量比は、これが種ブラックホールと宇宙初期の明るいクエーサーの間のミッシングリンクである可能性を示唆している。

