微生物学:ドーパミンD2受容体は微生物の代謝物を介して定着抵抗性を与える
Nature 628, 8006 doi: 10.1038/s41586-024-07179-5
腸のマイクロバイオームは、宿主の生理機能を調節する上で主要な役割を担っている。そうした機能の1つは定着抵抗性、つまり微生物共同体が、腸管出血性大腸菌(EHEC:enterohaemorrhagic Escherichia coli)血清型O157:H7などの腸の病原体から宿主を防御する能力である(EHEC O157:H7は食品により媒介されるAE〔attaching and effacing〕病原体であり、重篤な胃腸炎、腸炎、血性下痢、急性腎不全〔溶血性尿毒症症候群〕を引き起こす)。腸の微生物は、一部の病原体を打ち負かしたり、腸バリアや腸の免疫細胞による宿主防御を調節したりすることで定着抵抗性を提供できるが、この現象はほとんど解明されていない。今回我々は、必須アミノ酸であるL-トリプトファンを食餌から補給した際に、腸の微生物により産生される代謝物が、腸上皮の神経伝達物質受容体であるドーパミンD2受容体(DRD2)を活性化して、EHEC感染モデルとして広く使われているマウスAE病原体のCitrobacter rodentiumから宿主を防御することを示す。さらに、トリプトファン由来のこれらの代謝物によってDRD2が活性化されると、C. rodentiumおよびEHECのアクチン台座構造形成を介した腸上皮への接着に関与する宿主アクチン調節タンパク質の発現が低下した。我々の結果は、DRD2が神経系外で、腸上皮でのアクチン細胞骨格の構成制御において従来とは異なる役割を持つことを特徴とする、AE病原体に対する非カノニカルな定着抵抗性経路を明らかにしている。今回の知見は、腸の健康を改善し、世界中で数百万人を苦しめている消化管感染症を治療するために、食餌介入や薬理学的介入によってDRD2を標的とする予防法および治療法の手掛かりとなり得る。

