免疫遺伝学:塩基編集による変異誘発によってヒトT細胞機能を調整する対立遺伝子をマッピングする
Nature 625, 7996 doi: 10.1038/s41586-023-06835-6
CRISPRによって可能になったスクリーニング法は、T細胞機能を制御する遺伝子を見つけ出すための強力な手段の1つであり、これによって免疫療法の複数の標的候補が選び出されている。しかし、重要な遺伝子内にある特定のヌクレオチド配列を探索するには、新しい手法が必要である。ヒト初代T細胞での系統的な変異誘発は、特定の表現型を調整する対立遺伝子を明らかにできる可能性がある。また、DNA塩基エディターは、標的とする変異を高い効率で導入するための強力な手段である。今回我々は、ヒト初代T細胞の活性化応答を調整するアミノ酸残基をコードするヌクレオチドを正確に示すことを目的とする、大規模な塩基編集変異誘発プラットフォームを開発した。まず、T細胞機能に関与する385の遺伝子にわたって、タンパク質をコードする部位を塩基エディターの標的とさせる約11万7000の単一ガイドRNA分子からなるライブラリーを作成し、T細胞の活性化とサイトカイン産生を調節するタンパク質ドメインと特定のアミノ酸残基を系統的に見つけ出した。その結果、PIK3CD、VAV1、LCP2、PLCG1、DGKZなどのタンパク質で、重要な残基をコードするバリアント(機能獲得変異および機能喪失変異の両方が含まれる)を持つさまざまな対立遺伝子が見つかった。また、多くの対立遺伝子の機能への影響が検証され、塩基編集の成功はT細胞の細胞傷害機能を正にも負にも調整可能であることも実証された。さらに、プロトスペーサー隣接モチーフの要件を(NGGからNGに)緩和した塩基エディターを用いる高分解能スクリーニングにより、T細胞機能を調節するための標的にできる特定の構造ドメインやタンパク質間相互作用部位が明らかになった。従って、初代免疫細胞での塩基エディターを用いるスクリーニングは、免疫療法の設計を加速する可能性がある生化学的考察を示している。

