生態学:熱帯樹木群集全般にわたる普通種の一貫したパターン
Nature 625, 7996 doi: 10.1038/s41586-023-06820-z
樹木は、地球で最も生物多様性に富む生態系である熱帯林を形成している。樹木の種数は膨大で、熱帯樹種の大半については分かっていることがごくわずかであるため、環境の変化に対する応答を含め、熱帯林を理解することは極めて困難である。この問題は、普通種(個体数の多い種)に注目することで回避できる可能性がある。今回我々は、林冠が閉じていて構造が保たれているアフリカ、アマゾン川流域、東南アジアの老齢熱帯林の1568調査区にわたり、胸高直径10 cm以上の樹木100万3805本の目録データを用いて、普通樹種の個体数パターンを調べた。その結果、これらの3地域では、それぞれ2.2%、2.2%、2.3%の種が熱帯樹木の50%を構成していると推定された。林冠の閉じた全ての熱帯林に外挿すると、地球に存在する胸高直径10 cm以上の熱帯樹木8000億本のうち半数がわずか1053種で構成されていると推定された。生物地理的、気候的、人為的改変の歴史はさまざまであるにもかかわらず、普通種および種個体数分布には各大陸にわたって顕著に一貫したパターンが見いだされた。これは、樹木群集集合の基本的機構が全ての熱帯林に当てはまる可能性があることを示唆している。リサンプリング分析の結果、特に個体数の多い種は、取り扱い可能な数の既知種のリストに含まれている可能性が高いことが示された。これは、そうした種の生態を理解するための的を絞った取り組みを可能にする。今回の結果は、希少種の重要性を損ねるものではないが、熱帯林という世界で最も多様性に富む森林の過半数を構成する普通種に注目することで、環境の変化に対する応答のモデル化など、熱帯林を理解するための新たな機会をもたらす。

