翻訳:広範に存在する下流のRNAヘアピンが開始コドンの選択を動的に指令する
Nature 621, 7978 doi: 10.1038/s41586-023-06500-y
生物は、絶えず変化する状況に翻訳の再プログラム化によって適応する。上流開始コドン(uAUG)はmRNAに広く存在し、翻訳開始の代替部位を提供することによって翻訳の調節に極めて重要な役割を果たしている。しかし、さまざまな条件下でこの選択的翻訳開始を決めているのが何なのかは、いまだに明らかになっていない。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のパターン誘導免疫(PTI)の間にトランスクリプトーム全体にわたる翻訳解析と構造解析を組み合わせて行うことにより、免疫誘発により翻訳される転写産物が、上流オープンリーディングフレーム(uORF)に多いことを見いだした。感染がない場合、これらのuORFはuAUGのすぐ下流にあるヘアピンのために選択的に翻訳されるが、それはおそらく走査中の開始前複合体の速度を低下させ、結合するためと考えられる。深層学習を用いたモデル化によって、uAUGの下流にある認識可能な二本鎖RNA構造(uAUG-dsと命名)がuAUGの選択的な翻訳を引き起こす原因であることが偏りなく裏付けられ、翻訳を引き起こすuAUG-dsの予測と合理的設計が可能になった。そして、uAUG-dsを介した調節がヒト細胞に一般的に見られることが分かった。その上、uAUG-dsを介した開始コドン選択は動的に調節されている。植物では、免疫誘発後に酵母のDed1pおよびヒトのDDX3Xに相同なRNAヘリカーゼが誘導されてこれらのuAUG-ds構造を解消し、リボソームがuAUGをバイパスして下流の防御タンパク質を翻訳できるようになる。今回の研究により、mRNA構造が開始コドンの選択を動的に調節していることが明らかになった。このようなRNAの構造的特徴は広範に存在し、RNAヘリカーゼは全ての界を通して保存されていることから、mRNA構造のリモデリングは翻訳の再プログラム化の一般的な特徴であることが示唆される。

