Article
神経科学:血小板因子は加齢において炎症を減弱させて、認知機能を救済する
Nature 620, 7976 doi: 10.1038/s41586-023-06436-3
高齢者人口の増加から予想される認知症関連疾患発生率の増加の観点から、加齢に関連した認知機能低下を遅らせる(可能であれば回復させる)治療法を見つけることは重要である。本論文で我々は、血小板因子が若齢の血液が持つ有益性を、加齢脳へもたらすことを示す。老齢雄マウスに対して、若齢マウスの血液の、血小板を含む血漿分画の全身曝露を行うと、海馬における神経炎症が転写レベルや細胞レベルで減少し、海馬依存的な認知障害が改善した。若齢のマウスやヒトから調製した血漿試料では、高齢個体の試料と比較して、血小板由来ケモカインである血小板第4因子(PF4、別名CXCL4)の循環血中レベルが高かった。老齢マウスにおいて、外因性のPF4を全身投与すると、加齢に伴う海馬の神経炎症が減少し、シナプス可塑性に関連する分子レベルの変化が誘導され、認知機能が改善した。加齢促進性免疫因子の循環血中レベルの減少と、加齢末梢免疫系の回復が、老齢脳に対する全身性PF4の有益な効果に関係していた。CXCR3がPF4に対するケモカイン受容体であり、老齢脳に対する全身性PF4の細胞、分子、認知機能レベルでの有益性を部分的に仲介するという機構が明らかになった。まとめると我々のデータは、血小板由来因子は老齢での炎症を減弱し、認知機能を救済する有望な治療標的であることを示している。

