遺伝学:アフリカに特異的なヒトのCHD1L近傍の遺伝的多様性はHIV-1ウイルス量と関連している
Nature 620, 7976 doi: 10.1038/s41586-023-06370-4
HIV-1はいまだに世界的な健康危機であり、新たな治療標的の発見が必要なことは明らかである。今回我々は、アフリカにおけるHIV-1の極度に大きな負荷とヒトゲノムの顕著な多様性を踏まえ、「HIVゲノミクスの国際共同研究(ICGH:International Collaboration for the Genomics of HIV)」に参加しているアフリカ系HIV-1感染者3879人で、セットポイントウイルス量の制御に関する遺伝的決定因子を評価した。その結果、これまで報告されたことのない関連シグナルが第1染色体に見いだされ、このシグナルでは、最も強い関連が見られたバリアントは、マイナー対立遺伝子コピー当たりで1 ml当たりのlog10変換コピー数が約0.3低いセットポイントウイルス量と関連しており、これはアフリカ系集団に特異的なものだった。この最も関連の強いバリアントは遺伝子間領域にあり、長い遺伝子間ノンコーディングRNA(LINC00624)とコーディング遺伝子CHD1L(DNA修復に関与するヘリカーゼをコードする)の間に位置していた。iPS細胞由来のマクロファージおよび他の不死化細胞株で感染アッセイを行ったところ、CHD1Lノックダウン細胞およびCHD1Lノックアウト細胞でHIV-1複製の増加が認められた。集団遺伝学研究からは、アフリカに特異的なCHD1L近傍の遺伝的多様性がin vivoでのHIV複製と関連することを示す証拠が得られた。実験研究から、CHD1Lが一部の細胞タイプでin vitroでHIV感染を抑制できることが示唆されているが、今回の観測結果の根底にある機構を理解するには、細胞に基づく我々のアッセイでは再現できなかった、CHD1Lがin vivoでHIVの拡散に及ぼす可能性のある間接的な影響など、さらなる研究が必要である。

