生化学:ASGR1の阻害はコレステロールの排出促進によって脂質レベルを低下させる
Nature 608, 7922 doi: 10.1038/s41586-022-05006-3
高コレステロールは心血管疾患の主要なリスク因子である。現在のところ、コレステロールの排出を直接的に促進してコレステロール値を下げる薬剤はない。ヒトの遺伝学研究によって、アシアログリコプロテイン受容体1(Asialoglycoprotein receptor 1)遺伝子(ASGR1)の機能喪失変異体が低コレステロールと心血管疾患のリスク低下に関連していることが明らかになっている。ASGR1は肝臓でだけ発現されており、血中のアシアログリコプロテインの肝細胞への取り込みとリソソームでの分解に関わっている。ASGR1がコレステロール代謝に影響を及ぼす作用機序は不明である。今回我々は、Asgr1の欠失がLXRαを安定化することにより、血清と肝臓の脂質レベルを低下させることを見いだした。LXRαはABCA1とABCG5/G8を上方調節する。これらは高密度リポタンパク質へのコレステロール輸送を促進し、ABCA1は胆汁酸へ、ABCG5/G8は糞便へとコレステロールを排出させる。ASGR1が欠乏すると、糖タンパク質のエンドサイトーシスとリソソームでの分解が阻害され、リソソーム中のアミノ酸量が低下し、それによってmTORC1が阻害され、AMPKが活性化される。AMPKは、LXRαのユビキチンリガーゼであるBRCA1/BARD1を減少させることによって、LXRαを増加させる。その一方で、AMPKは脂質生合成を制御するSREBP1を抑制する。ASGR1に対する中和抗体は、コレステロール排出を増加させることによって脂質レベルを下げ、広く使われている2種類のコレステロール低下薬であるアトルバスタチンもしくはエゼチミブと組み合わせると有益な相乗効果を示す。まとめると、ASGR1を標的にすることにより、LXRα、ABCA1、ABCG5/G8が上方調節され、SREBP1と脂質合成が阻害されるためにコレステロールの排出が促進され、脂質レベルが低下することが、この研究によって実証された。

