Article

構造生物学:Hsp90–Hsp70–Hop–GRの構造から明らかになったHsp90のクライアント積み込み機構

Nature 601, 7893 doi: 10.1038/s41586-021-04252-1

正常に機能するプロテオームを維持することは、全ての生物の生存の基盤である。このことに不可欠なのは分子シャペロンであるHsp90とHsp70で、これらは一緒に働いてHsp90の多数の「クライアント(基質)タンパク質」の折りたたみ、リモデリング、成熟を促進する。グルココルチコイド受容体(GR)は、その活性をHsp90とHsp70に完全に依存するモデルクライアントタンパク質である。GRのシャペロニングには、Hsp70による不活性化、不活性なGR–Hsp90–Hsp70–Hop「積み込み(loading)」複合体の形成、活性のあるGR–Hsp90–p23「成熟」複合体への変換、それに続くGRの放出というサイクルが含まれている。しかし、我々の知る限り、どのクライアントタンパク質についても、この複雑なシャペロンサイクルの分子レベルでの解明は行われていない。今回我々は、Hsp70がGRをHsp90上に積み込んだGR積み込み複合体のクライオ電子顕微鏡構造を報告し、Hsp90とHsp70による直接的な協調の分子基盤を明らかにする。得られた構造から、2つのHsp70タンパク質の1つがGRをHsp90に引き渡し、もう1つがHopコシャペロンの足場となることが分かった。Hopは、GRを含めて、複合体の全ての構成成分と相互作用していて、続いて起こるATP加水分解のためにHsp90の状態を調整している。GRの構造は部分的にほどけていて、Hsp90とHsp70とHopにより作られている伸びた形の結合ポケットによって認識され、これによってGRの積み込みと不活性化の機構が明らかになった。GR成熟複合体の構造と併せて、我々はシャペロン依存的なクライアントリモデリングの完全な分子機構を提示し、クライアントの認識、阻害、移動、活性化の一般的原理を確立した。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度