がん:バリンtRNAのレベルや利用可能性によって白血病における複合体I組み立てが調節される
Nature 601, 7893 doi: 10.1038/s41586-021-04244-1
転移RNA(tRNA)生合成の脱調節が起こると、がんにおいて腫瘍発生促進性mRNAの翻訳が促されるが、腫瘍発生におけるtRNA脱調節の機構や結果についてはほとんど分かっていない。今回我々は、CRISPR–Cas9スクリーニングを用いてtRNA生合成に関与するとされてきた遺伝子に焦点を合わせ、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)において、バリンtRNA生合成の変化が、ミトコンドリアのエネルギー産生を高めるという機構を明らかにする。バリンアミノアシルtRNAシンテターゼの発現は、T-ALLの主要ながん遺伝子NOTCH1によって転写的に高められることから、tRNAの需要と供給の調整における発がん性転写プログラムの役割が明らかになった。マウスにおいて、食餌からのバリン摂取量を制限して、バリンの生体内での利用可能量を制限すると、このバランスが崩れ、白血病細胞量が減少し、in vivoの生存期間が延長した。機構的には、バリンを制限すると、ミトコンドリア複合体IのサブユニットをコードするmRNAの翻訳速度が低下し、これによって複合体Iの組み立て減少や酸化的リン酸化の障害が引き起こされる。さらに、さまざまなバリン条件でのゲノム規模CRISPR–Cas9機能喪失スクリーニングから、SLC7A5やBCL2など、いくつかの遺伝子が特定され、これらの遺伝子を遺伝的に除去あるいは薬理学的に阻害すると、バリン制限と相乗作用してT-ALLの増殖が低減した。我々の知見は、T-ALLの発症では、tRNAの脱調節が重要な適応であることを明らかにしており、血液悪性腫瘍においてtRNA生合成を標的とした食餌療法を行うための分子基盤を示している。

