Article

化学生物学:キラルナノ粒子に対するエナンチオマー依存性の免疫応答

Nature 601, 7893 doi: 10.1038/s41586-021-04243-2

キラリティーは、生物系物質形態と非生物系物質形態の統一的な構造指標である。この10年間で、キラル無機ナノ粒子の化学や物理の理解がかなり明確になってきたが、そうした粒子の複雑な生化学的ネットワークへの影響については、ほとんど分かっていない。生体分子と無機ナノ粒子の分子間相互作用はいくつかの共通点を示すが、こうした構造は、スケールや幾何形状、キラル形状のダイナミクスが異なるため、それらの鏡面非対称な複合体を阻害する可能性もあれば強化する可能性もある。今回我々は、アキラル、左手系、右手系の生体模倣金ナノ粒子が、異なるin vitro免疫応答やin vivo免疫応答を示すことを明らかにする。我々は、円偏光(CPL)照射を用いて、制御可能なナノメートルスケールのキラリティーと最大0.4の光学異方性因子(g値)を持つナノ粒子を合成した。そして、ナノ粒子が、接着型Gタンパク質共役受容体(AGPCR)ファミリーの2つのタンパク質[具体的には、分化抗原群97(CD97)とEMR1(epidermal-growth-factor-like-module receptor 1)に結合する結果、機械受容カリウム流出チャネルの開口、インフラマソームと呼ばれる免疫シグナル伝達複合体の生成、マウス骨髄由来樹状細胞の成熟がもたらされることを見いだした。in vivo免疫応答とin vitro免疫応答の両方が、ナノ粒子のg値に単調に依存していることから、ナノスケールのキラリティーを用いて免疫細胞の成熟を調節できることが示された。さらに、左手系のナノ粒子は、右手系と比較して、H9N2インフルエンザウイルスに対するワクチン接種のアジュバントとしてかなり高い(1258倍)効率を示し、これによって、免疫学においてナノスケールのキラリティーを使用する道が開かれた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度