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コロナウイルス:アカゲザルにおけるSARS-CoV-2に対する防御の関連要因

Nature 590, 7847 doi: 10.1038/s41586-020-03041-6

最近の研究で、アカゲザル(Macaca mulatta)では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への自然感染によって誘導された免疫とワクチンで誘導された免疫は、どちらもSARS-CoV-2に対して防御的な効果を持つことが報告された。しかし、SARS-CoV-2感染への防御に対する体液性免疫と細胞性免疫の重要性については、まだ明らかにされていない。今回我々は、回復期のアカゲザルから精製したIgGの養子移入が、感染歴のないレシピエント個体をSARS-CoV-2感染から用量依存的に防御することを示す。回復期のサルでCD8+ T細胞を除去すると、SARS-CoV-2再感染に対して、初回の自然感染により生じた免疫の防御効果が部分的に障害された。これは、抗体価が減少したり防御に十分でなかったりする状況では、細胞性免疫が役割を担うことを示唆している。これらのデータは、アカゲザルでのSARS-CoV-2防御には比較的低い抗体価でも十分であり、また抗体応答が最適ではない場合、細胞性免疫応答が防御に働き得ることを示している。また、アカゲザルでのSARS-CoV-2感染の治療には、より高い抗体価が必要であることも示す。これらの知見は、SARS-CoV-2ワクチンや免疫に基づく治療薬の開発に影響を与える。

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