がん:黒色腫では抗腫瘍免疫により異常ペプチドの提示が誘導される
Nature 590, 7845 doi: 10.1038/s41586-020-03054-1
腫瘍の広範な炎症は、浸潤しているT細胞の多さやインターフェロンγ(IFNγ)シグナル伝達のレベルの高さに反映され、黒色腫患者のチェックポイント免疫療法に対する応答を改善する。しかし、多くの腫瘍は、免疫抑制につながる細胞経路を活性化することでこうした応答を回避する。そのような機構の1つは、IFNγによって誘導される酵素であるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)によるキヌレニン経路に沿ったトリプトファン代謝物の産生である。しかし、黒色腫患者においてIDO1の阻害をPD1経路の遮断と組み合わせた臨床試験では、PD1経路のみの遮断と比較して治療の有効性は改善されなかった。これは、IDO1やそれに伴うトリプトファンの分解がmRNA翻訳やがんの進行に果たす役割についての理解が不完全であることを示している。今回我々は、黒色腫細胞でのリボソームプロファイリングを用いて、IFNγの持続的投与がmRNA翻訳に及ぼす影響を調べた。注目すべきことに、リボソームは、予想通りにトリプトファンコドンで停止するとともに、トリプトファンコドンの下流で蓄積することが観察された。これは、トリプトファンが存在しない場合には、リボソームはトリプトファンコドンを迂回することを示唆している。このようなトリプトファンに関連するリボソームの蓄積(「W-bump」と命名)を詳細に調べたところ、これはリボソームフレームシフト事象によって特徴付けられることが分かった。これと一致して、レポーターアッセイをプロテオーム解析および免疫ペプチド解析と組み合わせることで、IFNγ投与後に、リボソームフレームシフトの誘導や、トランスフレームによる異常ペプチドの生成と細胞表面への提示が起こることが実証された。健康なドナーからのナイーブT細胞を異常ペプチドでプライミングすると、ペプチド特異的なT細胞が誘導された。まとめると我々の結果は、IFNγによって誘導される、IDO1を介したトリプトファンの枯渇が、ペプチドームの全体像の多様化に関与することで、黒色腫細胞の免疫認識において役割を担っていることを示唆している。

