気候科学:融解水によって駆動される破砕に対する南極大陸の棚氷の脆弱性
Nature 584, 7822 doi: 10.1038/s41586-020-2627-8
大気の温暖化は、表面融解を増やして「水圧破砕」を促進することによって南極氷床の後退を加速する恐れがあり、こうした破砕部分では融解水が流れ込んで割れ目が拡大し、棚氷の崩壊の引き金となる可能性がある。氷床を支える棚氷の崩壊は、氷の流れと海水準上昇を加速させる。しかし、南極大陸の棚氷の氷床を支えている部分が、浸水した場合に水圧破砕に対して脆弱かどうか、脆弱だとすればどの程度かについては分かっていない。本論文では、棚氷の氷床を支えている部分の多くが脆弱であることを示唆する、2つの証拠を提示する。まず我々は、深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)を訓練し、南極の全ての棚氷にわたる衛星画像において、表面に現れている割れ目をマッピングした。次に、割れ目の安定性図を線形弾性破壊力学に基づいて開発し、現在の応力条件下において、底面の割れ目と乾燥した表面の割れ目が形成される場所を予測した。その結果、衛星画像での割れ目の検出に関しては限界があるにもかかわらず、理論予測の結果とDCNNによってマッピングされた割れ目が、非常によく一致することが見いだされた。さらに我々は、線形弾性破壊力学理論を用いて、表面の割れ目が水で満たされると不安定になる場所を予測した。現在融解水によって定期的に浸水している場所の多くは、水圧破砕に対して復元力があり、応力は十分に低く、水で満たされた割れ目は全て安定していることが分かった。逆に、棚氷の60 ± 10%(面積で)が、上流の氷を支えているとともに、浸水すると水圧破砕に対して脆弱になることが示された。このDCNNマップは、こうした棚氷の氷床を支えている部分に割れ目が存在することを裏付けている。表面融解の増大は、今回特定された広範囲に存在する脆弱な場所での浸水につながる場合は、水圧破砕の引き金になる可能性がある。これらの場所は、大気の温暖化が氷床の質量収支に最も大きな影響を及ぼす可能性がある場所である。

