気候科学:暖かい間氷期における東南極のウィルクス盆地の退氷
Nature 583, 7817 doi: 10.1038/s41586-020-2484-5
温暖化する地球における海水準の予測を改善する取り組みでは、地球の過去の温暖な間氷期における気温、海水準、極域氷床の広がりの決定に重点が置かれてきた。約40万年前の海洋酸素同位体ステージ11(MIS11)と呼ばれる間氷期において、全球の気温は1〜2°C高く、海水準は6〜13 m高かった。しかし、約10 mを超える海水準上昇の推定は、MIS11以前からMIS11を含め数百万年にわたり安定を保ってきたとされる東南極氷床の寄与を必要とするため、考慮されてこなかった。本論文では、東南極の氷河下の水中における234Uの濃縮の進展が、MIS11の温暖化に対する氷床の応答をどのように記録したのかを示す。ウィルクス盆地内では、オパールと方解石という氷河下の化学的沈殿物が、海水での値の最大20倍の234Uの蓄積(孤立した氷河下の貯水域内における岩石と水の接触によって生じる)を記録していた。234Uの濃縮の時間スケールから、この貯水域が生まれたのはMIS11であったことが特定された。234Uが、氷の安定している期間に蓄積され、退氷に応答して全球海洋に流出したことを示す、ローレンタイド氷床で観測された234U循環から得られた知見に基づき、我々は、今回の東南極のデータセットがMIS11におけるウィルクス盆地内の氷の損失を表していると解釈する。ウィルクス盆地内の234Uの蓄積は、マクマードドライバレーの塩水でも観測され、これは、この塩水が隣接する東南極氷床の下に由来することを示している。塩水の塩分と細菌の起源が海洋であることは、MIS11における氷の損失が海洋への流出と結び付いていたことを示唆している。まとめると今回のデータは、更新世の最も温暖だった間氷期の1つにおいて、ウィルクス盆地の氷床縁が、現在の氷縁の位置から約700 km内陸にある沈殿物の位置の近くまで後退していたことを示しており、現在の氷量を想定すると、これらは全球海水準に対して約3〜4 m寄与していたと思われる。

