神経科学:ナトリウムは興奮性GABA作動性経路を介して時計の時刻と出力を調節する
Nature 583, 7816 doi: 10.1038/s41586-020-2471-x
視交叉上核(SCN)は、体のマスター概日時計として働き、24時間の昼夜周期を通して変化する需要を見越して、生理と行動の変化を適応的に協調させている。SCNは例えば、睡眠前に水分摂取を促し、抗利尿ホルモンの分泌を促進し体温を低下させて睡眠中の水分喪失を減らすことで、夜間の渇感欠如に対応している。こうした応答は、中枢の浸透圧・ナトリウムセンサーによっても駆動することができ、活動期の間の浸透圧モル濃度の予定外の上昇に対応している。しかし、浸透圧・ナトリウムセンサーがこうした恒常性応答を駆動するために、概日時計の出力ネットワークを必要とするかどうかは分かっていない。今回我々は、マウスにおいて、ツァイトゲーバー時間19時(ZT19)、すなわちSCNのバソプレシン(SCNVP)ニューロンが不活性な時刻に塩(高張食塩液)の全身投与を行うと、SCNVPニューロンが興奮し、非震え熱産生(NST)が減少して体温が低下することを示す。in vivoでは、NSTと体温に対する高張食塩液の効果は、SCNVPニューロンの化学遺伝学的な阻害によって抑制され、SCNVPニューロンの光遺伝学的な刺激によって模擬された。解剖学的実験と電気生理学的実験の組み合わせによって、浸透圧・ナトリウムを感知する終板脈管器官(OVLT)でグルタミン酸デカルボキシラーゼを発現するニューロン(OVLTGAD)が、この情報を、GABA(γ-アミノ酪酸)の興奮性作用を介してSCNVPへと伝えていることが明らかになった。in vitroで、OVLTGADニューロンの軸索終末を光遺伝学的に活性化するとSCNVPニューロンが興奮し、in vivoでのNSTと体温に対する高張食塩液の効果が模擬された。また、OVLTGADニューロンを化学遺伝学的に阻害すると、高張食塩液の全身投与のNSTと体温への効果は著しく低下した。さらに、高張食塩液はマウスの概日移動活動の開始位相を有意に前進させた。この効果はOVLTGAD → SCNVP経路の光遺伝学的活性化によって模擬され、OVLTGADニューロンの化学遺伝学的阻害によって抑制された。まとめると今回の知見は、時計の時刻は光以外の生理学的に関連した手掛かりによって調節されることがあり、このような手掛かりは時計の出力ネットワークを介して予定外の恒常性応答を引き起こし得ることを明らかにしている。

