分子生物学:ヌクレオソームに結合したSWI/SNF複合体のクライオ電子顕微鏡構造
Nature 579, 7799 doi: 10.1038/s41586-020-2087-1
クロマチンリモデリング複合体SWI/SNFは非常によく保存されており、転写やDNA損傷修復などのさまざまな細胞過程で重要な役割を果たしている。SWI/SNFはATPを加水分解し、ヒストン八量体を動かして解離させることでクロマチン構造をリモデリングし、他の必須の因子が接近可能なDNA領域を作り出す。しかし、リモデリング活性の機構の解明は、このファミリーに属する複合体の高分解能構造が得られていないことで妨げられている。今回我々は、ヌクレオソームと結合した状態の出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)SWI/SNFの近原子分解能でのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告する。この構造では、アクチン関連タンパク質(Arp)モジュールが、全てのモジュールを連結するHSA(Snf2 helicase-SANT associated)ドメインと共に、ATPアーゼと複合体のその他の部分の間に挟まれている。複合体の主要部分には集合の足場となる構造が含まれており、足場は保存されているサブユニットのSnf12(別名SMARCDもしくはBAF60)、Snf5(別名SMARCB1もしくはBAF47、INI1)とSwi3(別名SMARCCもしくはBAF155、BAF170)の非対称な二量体で構成されている。保存されている別のサブユニットであるSwi1(別名ARID1もしくはBAF250)は、SWI/SNFの中心部にあって分子ハブとして働いている。また、酸性パッチではSnf5とヒストンの間の相互作用も観察され、このパッチは、DNAが移動する際のアンカーとして働いている可能性がある。今回の構造によって、ヒトSWI/SNF複合体中のがん関連変異の一部をマッピングしてその働きを推論することが可能になり、遺伝子活性化の際にSWI/SNFが+1ヌクレオソームを認識してリモデリングを行い、ヌクレオソーム非存在領域を作り出す仕組みのモデルを提案することができた。

