生物物理学:ループ型のレヴィ・フライトによってアクティブ懸濁液中のトレーサー拡散が促進される
Nature 579, 7799 doi: 10.1038/s41586-020-2086-2
ブラウン運動は、物理学、化学、生物科学の至る所で平衡媒質中の拡散のモデルとして幅広く使われている。しかし、現実世界の多くの系は、それらの機械的特徴と動的特徴の根底にある、エネルギー散逸を伴う能動的な過程のため本質的に平衡から外れている。アクティブコロイドや遊泳微生物の懸濁液などの典型的なアクティブな媒質中を受動的なトレーサーがたどる拡散過程は、拡散係数の著しい増大やトレーサー変位の非ガウス統計によって明らかにされたように、ブラウン運動とはかなり異なっている。こうした特徴的な性質は実験によって広範に観察されているが、これらの特性が系の微視的なダイナミクスからどのように出現するかを説明する包括的な理論はこれまでなかった。今回我々は、トレーサーと自己駆動的な遊泳体(スイマー)の間の流体力学的相互作用をモデル化する理論的枠組みを開発した。この枠組みでは、トレーサーが全ての経験的な観察結果を説明できる非マルコフ型の有色ポアソン過程に従うことを示す。この理論は、2つの異なるべき乗則指数の間に非単調なクロスオーバーがあるループ型のトレーサー運動を示す、長寿命のレヴィ・フライト領域があることを予測する。この領域の継続時間はスイマーの密度によって調整できることから、遊泳微生物の最適な採餌戦略は、栄養素がレヴィ・フライトする性質を利用するために微生物の密度に大きく依存している可能性が示唆される。今回の枠組みは、アクティブな系の熱力学などの重要な理論的問題や、遊泳微生物と栄養物や他の微小粒子(例えば、劣化プラスチック)との相互作用、人工的なナノスケールマシンの設計などの実際的な問題に取り組むのに適用できる。

