材料科学:元素金属における粒界相変態の観察
Nature 579, 7799 doi: 10.1038/s41586-020-2082-6
結晶粒間の界面である粒界(GB)の構造に関する理論には長い歴史があり、GBが相変態を起こすという概念は50年前に提案された。その根底には、複数の安定状態や準安定状態がさまざまなGB方位に存在するという仮定がある。何らかの平衡熱力学的性質が異なる界面状態を識別するために、最近「コンプレクション(complexion)」という用語が提案され、主に2成分系や多成分系において、さまざまな種類のコンプレクションの特性やコンプレクション間の転移の特性が評価されてきた。さらに、シミュレーションによって、界面の相挙動に関する知見が得られ、多くの材料系でGB転移が起こることが示されている。しかし、元素金属におけるGBの実験的な直接観察や変態の速度論を明らかにするのはまだ難しい。本論文では、元素銅の対称および非対称な[111]傾角GBにおいて、原子スケールのGBの相共存と相変態を実証する。原子分解能の撮像によって、Σ19b GB(ここで、Σ19は対応格子点の密度、bはGBのバリアントを表す)において2種類の異なる構造が共存することが明らかになり、これは進化的GB構造探索やクラスタリング分析の結果と一致する。さらに我々は、有限温度の分子動力学シミュレーションを用いて、こうしたGB相の共存と変態速度論を調べた。今回の結果は、GB相がどのように速度論的に捕捉されるかを実証しており、それによって原子スケールの室温観察が可能になった。今回の研究は、これまで異常な結晶粒成長、非アレニウス型の拡散、液体金属の脆化への影響を通して間接的にしか検出されなかった金属GBの相変態を、原子スケールでin situ研究する道を開く。

