分子生物学:哺乳類細胞でのαシヌクレインのシャペロンによる調節
Nature 577, 7788 doi: 10.1038/s41586-019-1808-9
パーキンソン病患者の神経変性には、レビー小体の出現が関係している。レビー小体は細胞内封入体で、本来的に無秩序な構造のタンパク質であるαシヌクレインの凝集体が含まれている。細胞内でのαシヌクレインの凝集傾向を調節している特異的な要因には、翻訳後修飾、エーベルソンキナーゼによるリン酸化、分子シャペロンのような細胞内装置との相互作用などがあるが、その基盤となる機構は不明である。今回我々は、分子シャペロンとαシヌクレインとの相互作用を、in vitroと細胞内において原子レベルで系統立てて調べた。その結果、6種類の著しく異なる分子シャペロンは共通して、αシヌクレインのN末端とTyr39周辺のセグメントからなるカノニカルなモチーフを認識し、αシヌクレインの凝集を妨げることが明らかになった。細胞でのNMR実験によって、哺乳類の生細胞中でも、同様な一過的相互作用パターンが維持されていることが示された。αシヌクレインと、シャペロンHSC70、またHSP90βなどのHSP90ファミリーに属するシャペロンとの相互作用を特異的に阻害すると、膜への一過的な結合が起こり、これがαシヌクレインのミトコンドリアへの顕著な局在化を再び引き起こして、同時に凝集体が形成された。αシヌクレインのTyr39のリン酸化は、αシヌクレインとシャペロンとの相互作用を直接的に妨げるので、パーキンソン病におけるエーベルソンキナーゼの役割は、これで機能的に説明できる。これらの知見によって、哺乳類細胞でのαシヌクレインの機能と凝集の重要な調節機構が確証され、分子シャペロンの担う機能の範囲が広がり、パーキンソン病の治療法に対する新たな見通しが示された。

