Article
物性物理学:量子ゆらぎを通して真空を越えるフォノン熱伝達
Nature 576, 7786 doi: 10.1038/s41586-019-1800-4
固体の熱伝達は通常、電子か、フォノンと呼ばれる原子振動のいずれかを通して起こる。真空中では、媒質がないため、熱はフォノンによってではなく熱放射によって伝達されると長く考えられてきた。しかし、最近の理論では、電磁場の量子ゆらぎによって、真空をまたいでフォノンの結合が生じ、それによって熱伝達が促進される可能性が予測されている。この特異な量子効果を実験的に明らかにできれば、量子熱力学に関する基本的な知見が得られ、ナノメートルスケール技術における熱管理に実用的な影響を及ぼすと思われる。今回我々は、真空ギャップで隔てられた2つの物体間の、量子ゆらぎによって生じる熱伝達を、実験的に実証する。我々は、ナノ機械システムを使って、真空ゆらぎを通した強いフォノン結合を実現し、個々のフォノンモード間の熱エネルギーの交換を観測した。実験観測の結果は、我々の理論計算の結果とよく一致し、近接場放射や静電相互作用などの他の影響とは明確に区別される。今回の量子ゆらぎを通したフォノン輸送の発見は、従来の伝導、対流、放射に加わる、これまで知られていなかった新たな熱伝達機構を示している。これは、ナノスケールのエネルギー輸送に量子真空を利用する道を開くものである。

