生態学:海洋動物の日周鉛直移動の全球的衛星観測
Nature 576, 7786 doi: 10.1038/s41586-019-1796-9
世界の海洋では毎晩、無数の海洋動物がプランクトンを食べるために数百メートル上方に移動して海面に到達する。この移動は日の出の直前に逆転し、これらの動物は日中の生息場所である暗い中深層域(水深200~1000 m)へと戻っていく。日周鉛直移動(DVM)と呼ばれるこの日々の旅は、主に日光の当たる表層で視覚捕食者を避けるための適応と考えられており、船舶での網を用いた標本採集によって200年近く前に初めて記録された。最近では、DVMは船舶に搭載された音響システム(音響ドップラー流向流速計など)によって日常的に記録されている。これらのデータからは、夜間の到達・離脱時刻が全ての海域で著しく類似していて、日中の潜水深度は水の透明度とともに増大することが明らかになっており、これは、水の透明度が高いほど動物の遊泳速度が高いことを示している。しかし、数十年にわたって音響測定が行われてきたにもかかわらず、広大な海域が未調査のままであり、利用可能なデータのある海域でも通常は数か月間の情報しか得られないため、DVMの理解は不完全なものになっている。この問題に取り組むことは、DVMが全球の海洋生物地球化学に不可欠な役割を担っているために重要である。夜間の海面における摂食と日中の深海における食餌の代謝は、炭素と栄養素の効率的な移出経路となっているからだ。今回我々は、衛星に搭載された光検出と測距(lidar)装置による観測結果を用いて、夜間に海面に到達するDVM動物からの光学的信号の全球分布を明らかにする。得られた知見は、DVM動物が一般に、透明な亜熱帯環流において総プランクトン量の比較的大きな割合を占めていることを示しており、これは、これらの海域では視覚捕食者の回避が重要な生活戦略であるという考え方と一致する。一方、DVMの総生物量は、食餌の利用可能性が高いより生産力の高い海域で多いことが分かった。さらに、今回の10年間にわたる衛星記録からは、DVM生物量には著しい時間的傾向があり、DVM生物量の変動と海面の生産力の変動が相関していることが明らかになった。以上の結果は、DVM活動の詳細を全球的に明らかにするとともに、それらの生物地球化学的重要性の定量化を改善するための道筋を示している。

