進化学:歯のエナメル質のプロテオームからギガントピテクス属が初期に分岐したオランウータン類であったことが明らかになった
Nature 576, 7786 doi: 10.1038/s41586-019-1728-8
ギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)は、更新世に東南アジアの密林環境に生息していた巨大なヒト科動物である。ギガントプテクス・ブラッキーと他の大型類人猿種との進化的類縁関係、そしてこれらの種の中期~後期中新世(1600万~530万年前)における分岐についてはいまだ明らかにされていない。ギガントピテクス属と絶滅ヒト科動物、現生ヒト科動物との間の関係に関してはさまざまな仮説があるが、歯と顎の形態が高度に派生的で、頭蓋および頭蓋後方の骨が発見されておらず、独立した分子的検証が行われていないため、それらの立証は難しい。我々は、中国のChuifeng洞窟で発見された190万年前のギガントピテクス・ブラッキーの大臼歯から、歯のエナメル質のプロテオームのアミノ酸配列を回収した。これらのタンパク質配列の熱年代(thermal age)は、これまでに報告されたいかなる哺乳類のプロテオームやゲノムのものより約5倍古かった。我々は、ギガントピテクス属がオランウータン属(Pongo)の姉妹クレードであり、両者の共通祖先が約1200万~1000万年前に存在したことを示す。これは、ギガントピテクス属のオランウータン属からの分岐が中新世における大型類人猿の放散の一部を形成していたことを示唆している。さらに我々は、これまで歯のエナメル質のプロテオームに認められたことのないα2-HS糖タンパク質の発現が、ギガントピテクス属の大きな大臼歯を特徴付ける厚いエナメル質の歯冠の生体鉱物化作用(バイオミネラリゼーション)で役割を担っていたと仮定する。亜熱帯地域で前期更新世の歯のエナメル質プロテオームが残存していたことで、古プロテオミクス解析の適用範囲は、これまで十分な量の遺伝情報の残存を許さないと考えられていた地域や年代にまでさらに拡張された。

