遺伝子工学:二本鎖切断やドナーDNAなしの検索・置換型ゲノム編集
Nature 576, 7785 doi: 10.1038/s41586-019-1711-4
病気の一因となる遺伝的バリアントの大半は、過剰な副産物の生成なしに効率よく修正するのが難しい。今回我々は、「プライムエディティング」という、用途が広く正確なゲノム編集法を開発した。この方法は、触媒作用を失ったCas9エンドヌクレアーゼに加工した逆転写酵素を融合させたものを使用してDNAの指定した部位に新しい遺伝情報を直接書き込むというもので、標的部位を指定し、目的の編集内容をコードするようにプライムエディティングガイドRNA(pegRNA)でプログラムされている。我々は、ヒト細胞で標的部位への挿入、欠失、点変異12種類の全てを含む、175を超える編集を二本鎖切断やドナーDNA鋳型を必要とせずに成し遂げた。また、ヒト細胞でプライムエディティング法を使って、鎌状赤血球症(HBBに1か所のトランスバージョン変異が必要)とテイ・サックス病(HEXAに1か所の欠失が必要)の主要な遺伝的原因を、効率よく、ほとんど副産物なしで修正した。また、PRNPに予防的なトランスバージョン変異を1か所導入したり、標的座位に正確に種々の標識やエピトープを挿入したりした。4種類のヒト細胞株と有糸分裂後の初代培養マウス皮質ニューロンとで、プライムエディティングのさまざまな効率が裏付けられた。プライムエディティングは、相同性に基づく修復と比べると効率は高いか同程度であり、副産物は少なく、塩基編集と比べると互いに相補的な長所と短所があり、Cas9ヌクレアーゼと比べるとCas9の既知のオフターゲット部位でオフターゲット編集を引き起こす確率がずっと低い。プライムエディティングはゲノム編集の範囲や可能性を大きく広げる方法であり、ヒトの病気に関連する既知の遺伝的バリアントの最大で89%を、原理的にはこの方法で修正できる可能性がある。

