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進化学:分布域拡大を促進するナビゲーション戦略としての走化性
Nature 575, 7784 doi: 10.1038/s41586-019-1733-y
細菌の走化性、すなわち細胞の化学誘引物質の濃度勾配に沿った方向性を伴う移動は、分子生物学において最も詳しく解明されている現象の1つだが、その生理的役割についてはほとんど知られていない。細菌の走化性は一般に、栄養素を使い尽くした時の飢餓応答や、有害な状況からの逃避反応だと考えられている。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)の軟寒天での時空間的動態を系統立てて調べることにより、走化性の別の役割を突き止めた。栄養素が豊富にある状況では、走化性は、現在の環境で栄養素を使い果たすはるか前に、非占有領域への細菌個体群の拡大を促進した。この過程では、低濃度の化学誘引物質が香りのような合図として働き、個体群は自らが生み出す濃度勾配に沿って移動の方向を決め、速度を上昇させる。このようなナビゲートされた分布域拡大の過程では、古典的なフィッシャー–コルモゴロフ動態に従う非誘導性の拡大と比べ、個体群はより迅速に拡大してより大きな増加をもたらす。従って、このような過程は、空間的に広がった栄養素の豊富な環境において個体群成長を促進する一般的な戦略といえる。

