がん:FSP1はグルタチオンに依存しないフェロトーシス抑制因子である
Nature 575, 7784 doi: 10.1038/s41586-019-1707-0
フェロトーシスは鉄依存的な壊死性の細胞死の一形態で、リン脂質への酸化的損傷が特徴である。これまで、フェロトーシスを制御しているのは、リン脂質ヒドロペルオキシド還元酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)とラジカルを捕捉する抗酸化物質だけだと考えられてきた。しかし、特定のタイプの細胞にフェロトーシス感受性をもたらす要因を解明することは、フェロトーシスの病態生理学的役割と、それをがんの治療にどのように利用でき得るかを理解するために不可欠である。代謝の制約とリン脂質の組成がフェロトーシス感受性に寄与するが、細胞のフェロトーシス抵抗性を説明できる細胞自律的な機構はまだ見つかっていない。今回我々は、ヒトがん細胞で、発現クローニング手法を用い、GPX4の喪失を補完できる遺伝子群を突き止めた。フラビンタンパク質のAIFM2(apoptosis-inducing factor mitochondria-associated 2)がこれまで認識されていなかった抗フェロトーシス遺伝子であることが分かった。AIFM2は、最初はアポトーシス促進遺伝子とされていたが、我々はこれを新たにFSP1(ferroptosis suppressor protein 1)と呼ぶことにした。FSP1は、GPX4の欠失によって生じるフェロトーシスを防ぐ作用をする。さらに、FSP1によるフェロトーシス抑制は、ユビキノン(別名、補酵素Q10;CoQ10)が仲介していることも実証する。CoQ10の還元型であるユビキノールは、脂質の過酸化に関わる脂質ペルオキシラジカルを捕捉するが、FSP1はNAD(P)Hを使ってCoQ10の再生を触媒する。薬理学的なFSP1の標的化は、GPX4阻害剤と強い相乗作用を示して、多数のがんでフェロトーシスを引き起こした。これらの知見から、FSP1–CoQ10–NAD(P)H経路が独立した平行系として存在し、GPX4やグルタチオンと協同してリン脂質の過酸化とフェロトーシスを抑制しているという結論が得られた。

